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音楽室ピックヨウル

雑司が谷のバイオリン教室

インドバイオリンについて

インド古典音楽の楽器としてのバイオリンについて、日本語で詳しい説明がされているものがネット上にみつからないので、下記のページから特にバイオリンに関する箇所を抜き出して訳しました。

小学校高学年くらいから読めるように…と訳したつもりです。おうちにバイオリンがある方は読みながらインド式の弾き方に挑戦してみてください。
※もちろん、原文もご確認ください。

Indian Violin

 

★は、こすぎによる注です。

 


インドバイオリン

1790年頃、東インド会社の軍楽隊(←ほとんどがアイルランド人)によってバイオリンがインドに持ち込まれた。Baluswami Dikshitar(1786~1859)は、マドラス(★今のチェンナイ)のセント・ジョージ基地にある陸軍軍楽隊のバンドマスターバイオリンを習い、南インド古典音楽に合う新しい演奏法を編み出した。彼はのちにアッタイヤプラムの宮廷音楽家になる。
実はこのことから、それよりも以前にポルトガルの宣教師たちによってバイオリンが持ち込まれ、礼拝で使うためにキリスト教改宗者たちに演奏法が教えられたのではないか、ということも考えられる。どちらにせよ、バイオリンは音色や音域が人間の声に近いことから、インドに持ち込まれてすぐに、インド古典音楽においても理想的な楽器であるとされた。
初期のアイルランドとの友好関係は、最初の天才(南インド音楽)バイオリニストのひとり”"Fiddle" Ponnusamiフィドルのポッヌサミ」によって支えられていた。そのため、「Rakes of Mallow」(★アイルランドの古い歌)のようなアイリッシュフィドルの音にサンスクリット語の歌詞や題名をつけた曲もあった(「Vande Minakshi」)。

インドでは、バイオリンを弾くときはあぐらをかき、楽器のうず巻きの先を右足首にしっかりとつける。これにより、手やアゴで補助することなく左手を指板の上で自由に上下にすべらせることが出来る。フィンガリング(=指使い)は、中指(上へすべらせる)と人差し指(下へすべらせる)を基本とする。これらの指をすべらせたり、ポルタメントする動きを南インド古典音楽ではmeendミーンドと呼び、よくすべらせるために手にオイルをぬったりもする。開放弦はDADA(レラレラ)やFCFC(ファドファド)など、インド音楽で重要なドローン(★通奏低音。タンプーラという弦楽器によって、そのラーガ(音列)の重要な音が曲中ずっと鳴ってる。)に合わせて調弦する。弓は西洋クラシック音楽のときよりも民族音楽的な持ち方をする(★割りと強く握ったり、手のひらが上向きだったりする感じかと思います)。ビブラートは西洋音楽でのようにはかけないが、わざとゆっくり音をゆらす奏法(andolanアーンドーラン)や、gamakガマカと呼ばれる速くゆらす奏法がある。

 

インド音楽では、バイオリン演奏でも歌う声をもとに音色を作り出す。西洋音楽の演奏と違い、パワフルに広がる音は求められない。調弦は5度でおこない、より柔らかい音にするために低い音に合わせることが多い。

 

インドバイオリンの装飾音
装飾音(sparsha svaraまたは北インドのkrintan、南インドのGamakas)はインドバイオリンの音色には必要不可欠である。西洋音楽では装飾音は、必ずつけなくてもいいオマケとして考えられる一方、インド音楽では装飾音が一番重要な音楽の根っこになる。

 

「装飾音のないラーガは、月のない夜や、虫も寄って来ない花、水のない川、宝石をつけていない女性のようなものだ。」
という言葉がある。

 

北インド音楽だけで100種類以上の装飾音がある。Subbarama Dikshitarが1904年に「Sangita Sampradaya Pradarsini」という本で装飾記号を最初にまとめた。もっと最近では、装飾音の現代的な形式について、Vidya Shankarの本「南インド古典音楽の芸術と科学」に書かれている。

 

Candida Connollyの本「バイオリンのためのインドのメロディ」でまとめられている主なガマカを紹介しよう。
Kampitaカンピータ=クネクネふる(となり合う二音の間でやさしく指をゆらす)
Nokkuノック=クニャッと引き下げる(上の微分音(半音の半分。ピアノにない音)から指をすべらせ、次の音に近づく)
Pratyahataプラチャハータ=タララッと打ち返す(モルデント。2度下の音から戻ってくる)
Sphuritaスプリータ=ズドドドドッと波打つ(ある音が繰り返され、二音目はモルデント)
Etrajaruエトラージャル=フニャッと上に音をすべらす
Irakkajaruイラッカージャル=フニャッと下にすべらす
Orikkaiオリッカイ=アイリッシュフィドルのカットや、クレズマーバイオリン(ユダヤの民族音楽)のkretschクレッチのようなパチンと打つ(上の音を一瞬触ることでその音を止める)
Ravaiラヴァイ=上の微分音を一瞬触って戻る
Oddukalオッデュカル=音をよそにそらす(隣り合う音を行き来する)

 

 

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↑『Indian Melodies for Violin』に掲載されていた譜例に、実際弾いてみてフィンガリングや音を書いてみました。

現在わたしが学んでいるのが北インド古典音楽で言葉やルールなど違うところが多々あり、分からないことだらけです。この本は西洋音楽アタマの読者にとても親切に説明してあるのでおすすめです。